本記事では思考力とは何か、クリティカルシンキングなどの思考法や判断力との関係性も踏まえて、現役コンサルタントが思考力について解説します。

思考力とは

思考力とは、簡単にいうと自分の知識や経験を生かして物事を考える力のことです。

まず、目の前で起きている問題を認識し、「こうしたらよいのかな?」と仮説を立て、それを基に具体的な行動を決めて実行していきます。

この思考の流れは1方向に進むわけではなく、うまくいかなければもう一度仮説から考え直すなどプロセスを行き来する場合もあります。

思考力がある人は、論理的に目的達成のための行動を決められるので、行動力があったり頭の回転が速かったりするのが特徴です。

また、問題を認識するにあたって様々な角度から選択肢を考えられるため、視野が広かったりアイデアを生み出しやすかったりもします。

このように、ビジネスにおいて思考力がある人というのは上司や部下から頼られる存在です。

ビジネスの問題は、売り上げ達成や利益の増加、他社との付き合い方など、なかなか一筋縄では解決できないことが多いもの。思考力があることで幅広い視野から深く問題を掘り下げ、解決策を決めることができます。

また、論理的に筋が通っているので誰が見てもわかりやすく、プレゼンやコミュニケーション場面でも役立ちます。

このように自分で論理的に物事を考えることで、ビジネスや様々な場面で役立つ力が思考力です。

思考力の3つの種類

思考力は、考え方によって3つに分けられます。クリティカルシンキング、ラテラルシンキング、ロジカルシンキングです。これらは現状を認識するとき、結論を出すときなど場面ごとに使い分けることで、精度が高い考え方ができます。それぞれの特徴を解説します。

クリティカルシンキング

クリティカルシンキングとは、直訳すると批判的思考です。前提を「本当にこれでよいのか?」疑っていきます。

前提とは常識やルールなどの枠組み、条件などです。何かを深く考えるときは、前提から思考を広げる必要があります。

たとえば、売上について考える場合、漠然と売上という文字を見ていても仕方ありません。売上が高いのか低いのか、何年間の売上なのかなど前提がないと考えられないのです。

ただ、この前提は常識や経験、バイアスなどでねじ曲がっている場合があります。しかし自分ではなかなか気づけません。これを捉え直すときに使えるのが、クリティカルシンキングです。

ラテラルシンキング

ラテラルシンキングとは、直訳で水平的思考です。様々な視点で物事をとらえ、選択肢や可能性を広げます。既成の理論や概念にとらわれず、自由な発想ができることがラテラルシンキングの利点です。

しかし、可能性を広げるだけでは最終的な結論がつきません。そこで、役立つのがロジカルシンキングです。

ロジカルシンキング

ロジカルシンキングとは、論理的思考という意味です。物事を「だから?」「どうして?」などと問いかけながら筋道立てて検証し、結論を出していきます。

ロジカルシンキングは、物事を論理的にわかりやすく伝えることにも役立つ考え方です。しかし、前提がそもそも間違っていると、結論も間違ってしまうというデメリットがあります。

ビジネスで活かす思考力を鍛える方法

思考力は日常的に鍛えることが可能です。ここでは主な方法を紹介します。

持っている知識を増やす

そもそも思考力は持っている知識を活用して考えることなので、知識が少ないと思考の幅が狭くなってしまいます。ですから、新聞やニュース、読書などを通して知識を広げていく必要があります。日ごろから様々な物ごとに関心をもつことが大事です。

常に考えることを意識する

思考には現状の認識→仮定→実行とある程度パターンがありますから、日ごろから考える経験を積むことで思考力が鍛えられます。

よりプロセスを分けて具体的に説明すると、まず物事の全体を認識できるようにしましょう。たとえば、上司から指示を受けた場合、ただ指示をこなすだけでなくなぜこの指示が出されたのか考えてみます。目標の全体像を把握しておくことで、目標に向かってより効果的に動くことも可能です。

続いて仮定を立てることについてです。たとえば、前任者から引き継いだ仕事の方法、ルーティーンワークなどただこなすのではなく、一旦「これでよいのか?」「こうしたらうまくいくのでは?」とクリティカルシンキングで見直してみましょう。

こうして日頃から考え、さらに行動に移してみることでより思考力は高まります。

働いているときだけでなく、ニュースから背景や問題を考えたり、チェスや将棋などのボードゲームをしたりすることなども有効です。

ボードゲームでは盤面全体を把握し、勝利という目標に向かって最適な一手を考える力を養うことにつながります。

人とのコミュニケーションをとる

相手の立場に立って物事を考えたり、話しやすいように興味のある話題を提供したりするなど、コミュニケーション場面でも思考力が鍛えられます。

また、思考力が高い、俗にいう頭の回転が速い人と話せば、その人がどうやって考えているのか学ぶことができ、さらにお得です。

このように、様々な方法で思考力は鍛えられます。

思考力と判断力の違い

思考力と似た言葉で、判断力があります。判断力とは、その場の状況を把握してたくさんの選択肢の中から何が最善か選び、決定する力です。

一方の思考力は、求めたい答えに向かって問題を分析し、掘り下げて考えながら結論を出すという違いがあります。

判断力には、目的を正しく認識する力や判断するための自分の軸をもつこと、リスクをとる決断力が求められます。

正しく物事を認識するためには、思考力を鍛えることも有効です。そして、思考力が深まることで正しい判断もしやすくなります。2つの力はお互いに関わり合っているのです。

たとえば、判断力を使ってまず状況を理解し、目的を決めます。そして目的が定まったらどうすれば達成できるか、思考力で現状が難しい原因をつきとめたり、達成までの道筋を立てたりして、最終的な結論を出すといった具合です。

判断力を前提に出した答えが本当に合っているのか、クリティカルシンキングなどの思考力を使って振り返り、判断を補強することにも使えます。

このように、2つの力には違いはありますが、どちらも物事を考えて結論づける上で大事な力です。